01 shou zirei - NIER4 ―ブックポスターの発表会を終えてー ・...

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1 57.9% 48.5% 56.8% 77.9% 64.5% 72.8% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 19年度 20年度 21年度 国語B「読むこと」の領域に係る 問題の正答率 全国平均 本校 15.5% 23.0% 40.5% 43.9% 34.9% 29.7% 9.0% 3.4% 全国 本校 国語の授業で目的に応じて資料を読み,自分の考えを話したり,書いたりしていますか (平成21年度) 当てはまる どちらかといえば,当てはまる どちらかといえば,当てはまらない 当てはまらない 自分の考えを形成し,表現する力を高める取組の実践例 ~「読むこと」の領域に係る問題で正答率が高い小学校の例~ 本校の児童は,全国調査において国語,算数 ともに全国平均を上回る正答率を示している が,特に国語の「読むこと」の領域の問題につ いて顕著な結果を示している。 本校では,「読むこと」の指導の際に,読ん だ内容をどのように活用するのか,どこに着目 して読むべきかを常に意識させており,文章を 目的に応じて読むという意識が児童に浸透し てきていることが,下の児童質問紙調査の結果 を示すグラフからもうかがえる。 全国学力・学習状況調査の結果における特徴 学校種 小学校(昭和49年開校) 学級数 児童数 計26学級 (約750名) 第1学年 4学級(約120名) 第2学年 4学級(約120名) 第3学年 4学級(約120名) 第4学年 4学級(約140名) 第5学年 4学級(約120名) 第6学年 4学級(約150名) 特別支援学級 2学級(5名) 教職員数 43名 校長・副校長 各1名 教諭 31名(うち,養護教諭 1 名) 講師 事務主査・栄養主査 技術吏員 非常勤講師2名 各1名 6名 ○学校の特色 本校の校区は,そのほとんどが住宅地である。児童は落ち着いて生活しており,何事にも 前向きに取り組むことができている。 また,帰国児童や外国人児童が多く,帰国子女教育や外国語活動に関する研究校の指定を 受けるなど,全教育活動を通してコミュニケーション能力の育成に努めている。 学校紹介

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57.9%48.5% 56.8%

77.9%64.5% 72.8%

0%20%40%60%80%

100%

19年度 20年度 21年度

国語B「読むこと」の領域に係る

問題の正答率

全国平均

本校

15.5%

23.0%

40.5%

43.9%

34.9%

29.7%

9.0%

3.4%

全国

本校

国語の授業で目的に応じて資料を読み,自分の考えを話したり,書いたりしていますか

(平成21年度)

当てはまる どちらかといえば,当てはまる どちらかといえば,当てはまらない 当てはまらない

自分の考えを形成し,表現する力を高める取組の実践例 ~「読むこと」の領域に係る問題で正答率が高い小学校の例~

本校の児童は,全国調査において国語,算数

ともに全国平均を上回る正答率を示している

が,特に国語の「読むこと」の領域の問題につ

いて顕著な結果を示している。

本校では,「読むこと」の指導の際に,読ん

だ内容をどのように活用するのか,どこに着目

して読むべきかを常に意識させており,文章を

目的に応じて読むという意識が児童に浸透し

てきていることが,下の児童質問紙調査の結果

を示すグラフからもうかがえる。

全国学力・学習状況調査の結果における特徴

学校種 小学校(昭和49年開校)

学級数

児童数

計26学級

(約750名)

第1学年 4学級(約120名)

第2学年 4学級(約120名)

第3学年 4学級(約120名)

第4学年 4学級(約140名)

第5学年 4学級(約120名)

第6学年 4学級(約150名)

特別支援学級 2学級(5名)

教職員数 43名 校長・副校長 各1名

教諭 31名(うち,養護教諭 1 名)

講師

事務主査・栄養主査

技術吏員

非常勤講師2名

各1名

6名

○学校の特色 本校の校区は,そのほとんどが住宅地である。児童は落ち着いて生活しており,何事にも

前向きに取り組むことができている。

また,帰国児童や外国人児童が多く,帰国子女教育や外国語活動に関する研究校の指定を

受けるなど,全教育活動を通してコミュニケーション能力の育成に努めている。

学校紹介

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○プロセスの基本的な考え方 これまで本校では,読む能力を育てるために,文章や資料の内容や形式に応じて,どのよ

うな点に着目すべきかを重視し,十分に検討した上で指導を行ってきた。平成19年度の全

国調査の結果からは,児童は文章の表現の仕方に着目したり,登場人物の心情の変化をとら

えたりする等の読む能力を着実に伸ばしてきていることがうかがえる。

しかし,読んだ内容に対して,自分の考えをどのように表現すべきか,どのように活用す

べきか,ということに関してはまだ十分といえず,平成20年度からは,「読むこと」から

「表現すること」へのプロセスをより明確にした単元計画を立てるなど,一連の活動として

連結を図る研究実践に努めている。

特に,「読むこと」から「表現すること」までのプロセスにおいて,①「どのように活用

していくのか」の意識の育成,②伝え合う場の設定などを中心的な課題として,具体的な指

導を強化している。

①「どのように活用していくのか」の意識の育成

具体的な言語活動の見通しをもち,どのように活用していくのかを意識できるよう,

次のように目的を明確にした「読むこと」の指導を行っている。

・ 意見スピーチの材料を集めるために,引用箇所などを考え,自分の意見をもちながら

文章や資料を読む。

・ レポートをまとめるために,必要な情報を取り出しながら説明的な文章や図,グラフ

を読む。 など

②伝え合う場の設定

文章や資料に対する自分自身の考えを明確にして,互いの感想や意見を伝え合う場を設

定する。このことにより,児童は自分の考えと他人の考えを比較して,共通点や相違点を

検討することができる。同時に,視野を広げたり,感覚を豊かにしたりすることも期待で

きる。このように話し合う活動の活性化が図られていることは,下の児童質問紙調査の結

果にも表れている。

読むこと INPUT

表現すること OUTPUT

理解・思考形成INTAKE

全国学力・学習状況調査の結果に寄与したと考えられる取組

「読むこと」から「表現すること」へのプロセス

33.4%

40.5%

42.2%

45.3%

20.0%

11.5%

4.3%

2.7%

全国

本校

普段の授業では,学級の友達との間で話し合う活動をよく行っていると思う

(平成21年度)

当てはまる どちらかといえば,当てはまる どちらかといえば,当てはまらない 当てはまらない

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○具体的な実践例1 【国語科 第5学年】単元名:ブックポスターの発表会をしよう 教材:「千年の釘にいどむ」

右のワークシートは,「深める」の段階

の後半で使用したものである。

まず,「筆者が一番伝えたかったこと」

について,グループで意見交換をしなが

ら記述する。

次に,「白鷹さんから学んだ生き方や考

え方」,「学んだことを今後の生活にどの

ように生かしていくか」について,一人

一人でじっくり考えながら記述する。

▼ブックポスター ▼ブックポスターの発表会

授業における取組

「読むこと」から「表現すること」へのプロセス(つづき)

▼「深める」ためのワークシート

広げる ⑦ブックポスターの発表会を行う。発表会では,キャッチコピーの内容等について,発

表したり質問したりしながら,考えや思いを共有する。

⑧並行読書した他の作品についても,グループでお薦めの一冊を選び,ポスターを制作

し,発表する。

つかむ ①ブックポスターの発表会という単元の目的を理解し,見通しをもって学習を開始する。

②「千年の釘にいどむ」を通して読み,感想を交流する。

③並行して,「挑戦」「技術」「伝承」など「千年の釘にいどむ」とテーマと関連がある別

のノンフィクション作品を読む。

深める ④「千年の釘にいどむ」について,各自で読みのテーマを設定し,グループでテーマを

発表し合い,意見交換をする。

⑤一番伝わってきたこと,一番感銘を受けたことは何かを考える。

⑥自分の感銘や感動を伝えるために必要な文章(部分)を選び,それをキャッチコピー

としたポスターを制作する。キャッチコピーは,その文章(部分)を選んだ理由を踏

まえて,図柄と関係付けるようにする。

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―ブックポスターの発表会を終えてー

・ ポスターづくりをするうちに,白鷹さんのあきらめない気持ちが分かってきました。ぼくも

サッカーをやっているけど,最後まであきらめずに練習をしたいと思いました。

・ 白鷹さんが自分の仕事について,「後世に残る仕事をしたい」と考えていることに感動した

ので,ポスターのキャッチコピーでどうにか表現したいと思いました。

・ テーマを決めて,ノンフィクションを読むのはおもしろいです。ノンフィクションのほかの

作品も読んでみたいと思いました。

・ キャッチコピーを考える場面では,一つ一つの言葉を深く考えて選ぶことができました。

教室からの声

○具体的な実践例2 【国語科 第4学年】 単元名:音読劇をしよう 教材:「ごんぎつね」 音読劇については,全ての学年の音読を扱う単元で実施している。読み取った心情や情

景を,言葉に込めて劇を行うことで,児童に「読むこと」から「表現すること」までを一

つの流れとして,スムーズに理解させることができる。

第4学年では,「ごんぎつね」を教材とし,学年全員で音読劇に取り組んだ。

▼音読劇の単元計画

時 学習活動・内容 指導・支援の留意点 評価規準 つかむ

1,2

全文を読み聞かせた

後,単元全体の学習

計画を立てる。

○全体の目標や見通しをもたせる。

○最終的な活動である群読に対し

ての明確な目標をもたせる。

・場面と登場人物の心

情の変化を考えなが

ら読んでいる。

3,4 物語曲線にそって場

面構成を考える。

○全体的な物語の展開を理解でき

るよう支援する。

・物語の展開を理解し

ている。

深める

13

登場人物の気持ちの

変化や情景を想像し

て読む。

自分が感じた心情な

どを発表し,伝え合

う。

○気持ちの変化や情景を想像する

ためのヒントを与える。

例)なぜいたずらばかりするのか。

○一人一人の感じ方の違いを大切

にさせる。

○場面の変化や心のすれ違いなど,

物語の分岐点に気付かせる。

・登場人物の気持ちの

変化や情景について

想像しながら読んで

いる。

・物語の分岐点に着目

して読んでいる。

・自分の言葉で心情等

を表現している。

広げる

14

17

心情の変化などを大

切にしながら,台本

を作成する。

○想像した気持ちの変化や情景を

台本に書き入れ,具体的な声の出

し方について支援する。

・読み方を自主的に工

夫している。

18

20

発表会の練習を行

う。

・学級単位

・学年単位

○学級ではグループごとの発表を

聞き合い,思いのすり合わせをさ

せる。

○学年全員で,心を一つに音読劇を

演じられるよう支援する。

・お互いの読みを聞き

合い,心情を共有し

ようとしている。

・心情を表すために工

夫している。

「読むこと」から「表現すること」へのプロセス(つづき)

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○「話すこと・聞くこと」の領域に係る実践例 本校では,国語の「読むこと」の領域にとどまらず,他の教科や領域においても「表現す

る力」の育成に力を入れている。

以下は,国語の「話すこと・聞くこと」の領域に係る活動における実践例である。「マイ

クロディベート(3人で行うやさしいディベート)」,全体討論会と活動を発展させる中で,

「つかむ」「深める」「広げる」の三つの段階を,らせん的に繰り返しながら表現する力を高

めていく。

【国語科 第6学年】 単元名:説得力のある討論会

「つかむ」の段階では,討論会の在り方や話し方についての理解を深め,学習の見通しを

もたせている。「深める」の段階では,マイクロディベートを活用し,自分の意見の形成と

ともに,より効果的な表現方法についての考察を行わせている。「広げる」の段階では,友

達の意見等を踏まえ自分の考えを再形成したり,妥当性を検証したりしながら,着実に表現

する力を育成していく。

また,この単元では,どの段階においても,賛成と反対の両方の立場から意見を考えたり,

相手の意見を踏まえて自分の意見を修正したりするなど柔軟な考え方を大切にさせるよう

留意している。

表現する力を育てる活動

つかむ:討論会の理解

・討論会のねらいを理解し,

学習の見通しをもつ。

・説得力のある話し方につい

て意見交換をする。

深める:意見の形成

・論題の意図を理解し,自分

の意見を整理する。

・相手に分かりやすい適切な

表現方法を考える。

・友達の意見を聞き,自分の

考えと比較をする。

広げる:

自分の見方や考え方の拡張

・友人の意見を尊重しつつ,

自分の意見を再形成する。

・討論会後に,自分の考えが

どのように広がったか,あ

るいは変化したかを確認

する。

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学習に見通しをもって取り組めるようにするため,まず①話合いにはどのような形がある

か,②討論会のねらいはどのようなものかを確認する。特に②に関しては,より良い討論会

とするために,話し手,聞き手それぞれに大切な意識などを十分に指導する。次に,③討論

会の基本的な流れを説明し,④主張に説得力をもたせるための話し方のこつや,筋道を説明

するための工夫について指導する。司会者には⑤のようなカードを配布し,活用できるよう

にさせている。

▼⑤クラス全体討論会用司会進行カード

表現する力を育てる活動(つづき)

▼①話合いの形 ▼②討論会のねらい

▼③討論会の流れ ▼④話し方のこつや工夫

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授業以外の取組

○ノートづくりを工夫し,表現する力を育てる実践例 表現する力を育てるために,ノートづくりの指導も工夫している。ノートには,自分が気

付いたこと,考えたことを積極的に書き込ませるとともに,友達が考えた内容についてもノ

ートにとらせ,自分の考えと友達の考えを比較させたり,評価させたりしている。これらを

通じて,自分自身が理解していく過程を確認させると同時に,表現する力を育てていくこと

ができると考えている。

【算数科 第6学年】 単元名:単位量当たりの大きさ

問い どっちの花だんが混んでいますか。

場 所 たねの数 面 積 玄関脇の花だん 150個 6m2

プール脇の花だん 120個 4m2

▼自分の考えを記入 ▼友達の考えを記入

表現する力を育てる活動(つづき)

○「言葉の窓」コーナーの設置

児童の語彙い

を増やし,表現を豊かにするため,

言葉を表にして掲示する「言葉の窓」コーナーを,

廊下や踊り場,教室といった様々な場所に設置し

ており,生活の中で積極的に使うよう指導してい

る。

質問をする場面や意見を述べる場面で使用する

語を「あたたかい聞き方」,「やさしい話し方」と

いった視点でまとめたり,あいさつや感謝の言葉

をまとめたりするなど,機能に着目してカテゴリ

ー分けし,表にして提示している。

表現する力を伸ばす豊かな言語環境の整備

▼コーナーに掲示する言葉の表

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○校内重点研究 本校では,読む能力を育てるため,「読むこと」から「表現すること」へのプロセスを大

切にした指導法の研究を行ってきた。この流れを踏まえ,平成21年度は,特に表現する力

を育成すべく,指導法の研究を行っている。

これらの指導法の共有や,足並みをそろえた授業改善等を行うために,年間5回,外部講

師を招聘へい

し校内授業研究会を行っている。また,授業研究会後には,「重点研究会報」を出

し,再度研修の内容を確認することで確実に共通理解を深められるようにしている。

さらに,授業の指導案やワークシートなどをファイル化し,学校全体の財産としていつで

も活用できるようにしている。

▼重点研究会報

学校全体が一体となって取り組むために

校長,副校長からも

一言アドバイス

授業者からの自評

研究授業のテーマについ

てのグループディスカッ

ションの記録

外部講師からの講評のま

とめ