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Appendix (No. 1)
命題1 2 次正方行列 A =
(a bc d
)は行基本変形によってつぎのいずれかの型
の階段行列に変形できる(にはなんらかの数が入る
).
(α)
(1
0 1
) (β)
(1
0 0
) (γ)
(0 1
0 0
) (δ)
(0 0
0 0
)
(証明) rankA によって場合分けをして証明を進める.
(1) rankA = 2 の場合を考える.このときは ad− bc = 0 より(ac
)= 0 である.
したがって,a = 0 または c = 0 であるので,
(i) a = 0 の場合 (ii) c = 0 の場合
に小分けしよう.
(i) a = 0 ならば A は(a b
c d
)−−−−−−−−→(2)−(c/a)×(1)
(a b
0 d− bc/a
)(1)×(1/a)−−−−−−−−−→
(2)×a
ad− bc
(1 b/a
0 1
)
と α 型に変形される.
(ii) c = 0 ならば A は(a b
c d
)−→
(c d
a b
)−−−−−−−−→(2)−(a/c)×(1)
(c d
0 b− ad/c
)
(1)×(1/c)−−−−−−−−−→(2)×
c
bc− ad
(1 d/c
0 1
)
と α 型に変形される.
(2) rankA = 1 の場合を考える.このときは ad − bc = 0 であり,かつ,(ac
)と(bd
)の少なくとも一方は零ベクトルではないので,
(i) a = 0 の場合 (ii) c = 0 の場合
(iii) a = c = 0 かつ b = 0 の場合 (iv) a = c = 0 かつ d = 0 の場合
に小分けしよう.
(i) a = 0 ならば A は(a b
c d
)−−−−−−−−→(2)−(c/a)×(1)
(a b
0 d− bc/a
)(1)×(1/a)−−−−−→
(1 b/a
0 0
)
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と β 型に変形される.
(ii) c = 0 ならば A は(a b
c d
)−→
(c d
a b
)−−−−−−−−→(2)−(a/c)×(1)
(c d
0 b− ad/c
)(1)×(1/c)−−−−−→
(1 d/c
0 0
)
と β 型に変形される.
(iii) a = c = 0 かつ b = 0 ならば A は(0 b
0 d
)−−−−−−−−→(2)−(d/b)×(1)
(0 b
0 0
)(1)×(1/b)−−−−−→
(0 1
0 0
)
と γ 型に変形される.
(iv) a = c = 0 かつ d = 0 ならば A は(0 b
0 d
)−→
(0 d
0 b
)−−−−−−−−→(2)−(b/d)×(1)
(0 d
0 0
)(1)×(1/d)−−−−−→
(0 1
0 0
)
と γ 型に変形される.
(3) rankA = 0 の場合を考える.このときは A =
(0 0
0 0
)であるから,A はも
ともと δ 型の階段行列である.
命題2 2 次正方行列 A を行基本変形によって (α) - (δ) のいずれかの型の階段行列 S に変形したとき,rankA と S の零ベクトルではない行ベクトルの数の間にはつぎの関係がある.
• rankA = 2 ならば α 型の S に変形されるので 2 本の零ベクトルではない行ベクトルがある
• rankA = 1 ならば β 型か γ 型の S に変形されるので 1 本の零ベクトルではない行ベクトルがある
• rankA = 0 ならば A はもともと δ 型の S であり,0 本の零ベクトルではない行ベクトルがある
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Appendix (No. 2)
命題 階段行列の零ベクトルではない行ベクトル全体は線形独立である.
(証明) m× n 階段行列 S の零ベクトルではない行ベクトルを上から順に
s1 =(s11 s12 · · · s1n
)s2 =
(s21 s22 · · · s2n
)· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·sr =
(sr1 sr2 · · · srn
)とする.さらに,S の第 i 行目の左端から連続する 0 の数を ℓi とし ki = ℓi +1
と置く(i = 1, 2, · · · , r).すると,
si1 = si2 = · · · = siℓi = 0, siki = 0 (i = 1, 2, · · · , r)
である.加えて,1 ≤ k1 < k2 < · · · < kr ≤ n であるから s1,s2,· · ·,sr は線形独立である.
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Appendix (No. 3)
命題1 m× n 行列 A を係数行列とする連立 1 次方程式 (4.25) において定数項 p1,p2,· · ·,pm がすべて 0 であるとする(このとき,(4.25) は同次連立 1
次方程式,または,斉次連立 1 次方程式と呼ばれる).x1 = 0,x2 = 0,· · ·,xn = 0 は明らかに同次連立 1 次方程式の解であるが,m < n ならばこれ以外に非自明解(x1,x2,· · ·,xn の内の少なくとも 1 つが 0 ではない解)が存在する.
(証明) 拡大係数行列 A の行基本変形の過程において,その第 n + 1 列成分は常に 0 であるから,A から行基本変形によって得られる階段行列は
S =
s1,1 s1,2 · · · s1,n 0
s2,1 s2,2 · · · s2,n 0...
.... . .
......
sm,1 sm,2 · · · sm,n 0
という形になる(この証明の中では行を表す添え字と列を表す添え字の間にカンマを入れる).S の第 i 行目の左端から連続する 0 の数を ℓi とし ki = ℓi+1 と置く(i = 1, 2, · · · ,m).r を ℓr < nを満たす最大の整数とする.i = 1, 2, · · · , rについてつぎが成立する.
(1) si,1 = si,2 = · · · = si,ℓi = 0, si,ki = 0
もし r < m ならば S の第 r + 1 行~第 m 行はすべて自明な等式 0 = 0 を意味する.第 r 行,第 r− 1 行,· · ·,第 2 行,第 1 行が意味する方程式は (1)
に注目すれば,それぞれ,つぎのように表現できる.
(2)
xkr =
{0 (kr = n)
−(sr,kr+1xkr+1 + · · ·+ sr,nxn)/sr,kr (kr < n)
xkr−1 = −(sr−1,kr−1+1xkr−1+1 + · · ·+ sr−1,nxn)/sr−1,kr−1
· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·
xk2 = −(s2,k2+1xk2+1 + · · ·+ s2,nxn)/s2,k2
xk1 = −(s1,k1+1xk1+1 + · · ·+ s1,nxn)/s1,k1
(2) には r 個の方程式があるが,r ≤ m < n なので x1,x2,· · ·,xn のうちで(2) の左辺に現れないものが 1 つ以上ある.x1,x2,· · ·,xn のうちで (2) の左辺に現れないものの値を自由に与え,その後,(2) を上から順番に利用してxkr,xkr−1,· · ·,xk2,xk1 の値をこの順番に計算する.こうしてして得られるx1,x2,· · ·,xn は (4.25) の解になる.したがって,(2) の左辺に現れない未知変数の値を 0 以外にすれば,(4.25) の非自明解が得られる.
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命題2 ある行列から行基本変形により 2 通りの階段行列 A,B が得られたとしても rankA = rankB である.
(証明) r = rankA,s = rank = B と置く.A の零ベクトルではない行ベクトルを上から順に a1,a2,· · ·,ar,B の零ベクトルではない行ベクトルを上から順に b1,b2,· · ·,bs とする.a1,a2,· · ·,ar は線形独立,b1,b2,· · ·,bs も線形独立である.背理法によって証明する.つまり,r = s と仮定すると矛盾が発生することを示す.一般性を損ねることなく,s > r と仮定してよい.行基本変形は可逆の操作であるので,A から行基本変形でもとの行列に戻
り,さらに B に変形することができる.行基本変形の操作はすべて行ベクトルの定数倍と和で表現できるので,各 bi は a1,a2,· · ·,ar の線形結合
(3) bi = c1ia1 + c2ia2 + · · ·+ criar (i = 1, 2, · · · , s)
で表される.このように表現された b1,b2,· · ·,bs の線形独立性を確認しよう.ある数 q1,q2,· · ·,qs について
(4) q1b1 + q2b2 + · · ·+ qsbs = 0
とする.(4) に (3) を代入して,a1,a2,· · ·,ar ごとにまとめると
(q1c11 + q2c12 + · · ·+ qsc1s)a1 + (q1c21 + q2c22 + · · ·+ qsc2s)a2
(5) + · · · · · · · · ·+ (q1cr1 + q2cr2 + · · ·+ qscrs)ar = 0
となる.a1,a2,· · ·,ar は線形独立だから (5) で a1,a2,· · ·,ar の係数はすべて 0 なければならない,すなわち,
(6)
c11 c12 · · · c1s
c21 c22 · · · c2s...
.... . .
...
cr1 cr2 · · · crs
q1
q2...
qs
=
0
0...
0
である.(6) は q1,q2,· · ·,qs を未知変数とする同次連立 1 次方程式であるが,変数の数 s が式の数 r よりも大きい.したがって,命題1より (6) は非自明解を持つ.以上より,(4) であったとしても q1,q2,· · ·,qs がすべて 0 であるとは限らない.これは b1,b2,· · ·,bs が線形独立ではないことを意味し,矛盾に至る.したがって,r = s である.
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Appendix (No. 4)
命題 線形独立な行ベクトルの最大数と線形独立な列ベクトルの最大数は一致する.
(証明)ランクが r である m× n 行列 A から行基本変形によって得られる階段行列 S の第 i 行目の左端から連続する 0 の数を ℓi とし ki = ℓi + 1 と置く(i = 1, 2, · · · , r).このとき S の成分 sij は
si1 = si2 = · · · = siℓi = 0, siki = 0 (i = 1, 2, · · · , r)
を満たす.k1 < k2 < · · · < kr であるから,S の第 k1 列,第 k2 列,・・・,第 kr列が,それぞれ,第 1 列,第 2 列,· · ·,第 r 列になるように列基本変形を行えば,
s1k1 · · · · · ·0 s2k2 · · · · · ·... 0
. . . . . ....
......
.... . . . . . · · ·
0 · · · · · · 0 srkr · · ·0 · · · · · · · · · 0 0 · · · 0...
......
...
0 · · · · · · · · · 0 0 · · · 0
となる.ただし, にはなんらかの数が入る.さらに, の部分が 0 になるように列基本変形を行えば,
s1k1 0 · · · 0 0 · · · 0
0 s2k2. . .
......
......
. . . . . . 0...
...0 · · · 0 srkr 0 · · · 00 · · · · · · 0 0 · · · 0...
......
...0 · · · · · · 0 0 · · · 0
と変形される.したがって,線形独立な行ベクトルの最大数と線形独立な列ベクトルの最大数は一致する.
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Appendix (No. 5)
命題 係数行列と拡大係数行列のランクが同じならば解が存在し,そうでなければ解は存在しない.また,係数行列と拡大係数行列のランクが未知変数の数と同じならば解は 1 つだけ存在し,未知変数の数よりも小さければ無数の解が存在する.
(証明) 連立 1 次方程式 (4.25) の係数行列を A(m× n 行列),拡大係数行列を A とする.
A に行基本変形を施して得られた階段行列を S = {si,j} とする(この証明の中では行を表す添え字と列を表す添え字の間にカンマを入れる).はじめに rankA < rankA の場合を考える.この場合,S には
si,1 = si,2 = · · · = si,n = 0, si,n+1 = 0
となる行がある.したがって,解は存在しない.つぎに r = rankA = rankA の場合を考える.S の第 i 行目の左端から連続
する 0 の数を ℓi とし ki = ℓi + 1 と置く(i = 1, 2, · · · , r).すると,
(1) si,1 = si,2 = · · · = si,ℓi = 0, si,ki = 0, ki ≤ n (i = 1, 2, · · · , r)
である.つぎの例では m = 6,n = 7,r = 5,ℓ1 = 0,ℓ2 = 2,ℓ3 = 3,ℓr−1 = 4,ℓr = 6 である.
S =
s1,k1 s1,n+1
0 0 s2,k2 s2,n+1
0 0 0 s3,k3 s3,n+1
0 0 0 0 sr−1,kr−1 sr−1,n+1
0 0 0 0 0 0 sr,kr sr,n+1
0 0 0 0 0 0 0 0
もし r < m ならば S の第 r+ 1 行~第 m 行はすべて自明な等式 0 = 0 を意味する.第 r 行,第 r − 1 行,· · ·,第 2 行,第 1 行が意味する方程式は (1) に注目すれば,それぞれ,つぎのように表現できる.
(2)
xkr =
{sr,n+1/sr,kr (kr = n)
(sr,n+1 − sr,kr+1xkr+1 − · · · − sr,nxn)/sr,kr (kr < n)
xkr−1 = (sr−1,n+1 − sr−1,kr−1+1xkr−1+1 − · · · − sr−1,nxn)/sr−1,kr−1
· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·
xk2 = (s2,n+1 − s2,k2+1xk2+1 − · · · − s2,nxn)/s2,k2
xk1 = (s1,n+1 − s1,k1+1xk1+1 − · · · − s1,nxn)/s1,k1
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したがって,x1,x2,· · ·,xn のうちで (2) の左辺に現れないものの値を自由に与え,その後,(2) を上から順番に利用して xkr,xkr−1,· · ·,xk2,xk1 の値をこの順番に計算する.こうしてして得られる x1,x2,· · ·,xn は (4.25) の解になる.
(2) には r 個の方程式がある,ゆえに,r < n ならば x1,x2,· · ·,xn のうちで (2) の左辺に現れないものが 1 つ以上あり,その値を自由に設定できるので (4.25) は無数の解を持つ.一方,r = n ならば x1,x2,· · ·,xn がすべて (2)
の左辺に現れるので (4.25) の解はちょうど 1 つになる.
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Appendix (No. 6)
命題 n 次正方行列 A の相異なる固有値 λ1,λ2,· · ·,λr に対応する固有ベクトル v1,v2,· · ·,vr は線形独立である.
(証明) もし
(1) a1v1 + a2v2 + · · ·+ arvr = 0
ならば a1 = a2 = · · · = ar = 0 であることを
(A− λjI)vk = (λk − λj)vk (1 ≤ j ≤ r, 1 ≤ k ≤ r)
を利用して証明する.(1) の両辺に左から (A− λ2I) を掛けると,(A− λ2I)v2 = (λ2 − λ2)v2 = 0
よりa1(λ1 − λ2)v1 + a3(λ3 − λ2)v3 + · · · + ar(λr − λ2)vr = 0
となる.左から,さらに (A− λ3I),(A− λ4I),· · ·,(A− λrI) を順々に掛ければ,v3,v4,· · ·,vr の係数が順々に 0 になり,つぎに至る.
a1(λ1 − λr) · · · (λ1 − λ4)(λ1 − λ3)(λ1 − λ2)v1 = 0
ここで λ1,λ2,· · ·,λr は相異なり v1 = 0 だから a1 = 0 である.また,(1)
の両辺に左から(A− λrI) · · · (A− λ3I)(A− λ1I)
を掛ければa2(λ2 − λr) · · · (λ2 − λ3)(λ2 − λ1)v2 = 0
より a2 = 0 であることが分かる.以下,同様にして,a3 = 0,a4 = 0,· · ·,ar−1 = 0 である.最後に,(1) の両辺に左から
(A− λr−1I) · · · (A− λ2I)(A− λ1I)
をかければar(λr − λr−1) · · · (λr − λ2)(λr − λ1)vr = 0
より ar = 0 であることが分かる.
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Appendix (No. 7)
命題 Aを 2次正方行列とする.Aの固有値 λが重解であり,rank(A−λI) = 1
である場合を考える.λ に対応する固有ベクトルを v1 とする.このとき,連立 1 次方程式
(1) (A− λI)
(xy
)= v1
は解を持ち,v1 と解(xy
)は線形独立である.
(証明) A − λI のランクが 1 であるから,A − λI の第 1 列ベクトルと第2 列ベクトルは線形従属であり,また,第 1 列ベクトルと第 2 列ベクトルの少なくと一方は零ベクトルではない.したがって,A− λI はあるベクトル v = 0
およびある数 p,q によって
A− λI =(pv qv
)= v
(p q
)と表現される.ただし,p,q の少なくとも一方は 0 ではない.ベクトル v に左から A− λI をかけると
(2) (A− λI)v = v(p q
)v = av, a =
(p q
)v
が得られる.最後の変形は(p q
)v が単なる数であることに注目して,これを
a とおいたものである.(2) は
(3) Av = (λ+ a)v
と書きなおされる.すなわち,v はA の固有値 λ+ a に対応する固有ベクトルである.仮定より a = 0 であり,v = kv1 となる数 k = 0 が存在する.すると,連立 1 次方程式 (1) の拡大係数行列(
A− λI v1
)=(pv qv v1
)=(pkv1 qkv1 v1
)のランクは 1 であり,A− λI のランクと一致する.したがって,まとめ:連立1 次方程式の解の構造(p. 64) より (1) は無数の解を持つ.
(1) の任意のある解を v2 とする.v1 と v2 が線形独立であることを示そう.線形独立でないと仮定すると,v2 = kv1 となる数 k が存在し,(1) から
v1 = (A− λI)v2 = k(A− λI)v1 = k(Av1 − λv1) = 0
というふうに矛盾に至る.したがって,v1 と v2 は線形独立である.
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